2014 7月

短編小説3『ナオさん』

201407/26

   「ノリ、帰ってきただか」とナオさんは小走りで駆けつけ息子を抱いた。「大きくなっただなあ。すぐご飯の支度するからな、父ちゃんにも顔出しておいで。」マツスケは庭の畑で土いじりをしていた。「父ちゃん。」ノリヒコ…

短編小説2『引退試合』

201407/17

   主審の合図で本戦がはじまった。体重100kgを越える巨漢が身をぶつけて押し寄せてくる。こうやって力任せに相手をなぎ倒しトーナメントの決勝まで進んできたのだ。ノリヒコはコーナーまで後退しつつも四肢を柳のよう…

短編小説1『少年時代の妹』

201407/11

   物心ついたときからりーちゃんはそばにいた。歩けばひょこひょこと後ろをついてきて、座れば左右のどちらかにりーちゃんはいた。ささいなことでよく泣かせてしまった。叔母さんはしゃがんで聞く。「じゃあもう帰る?」り…