妻鹿日記(61)ダイエット序曲

202003/04
Category : Notes妻鹿日記 Tag :

妻しか(鹿)日記

登場人物:妻…妻 私…鹿

第61回:鹿しかわからない その1

* * *

妻がトットットと足踏みしていた。家のなかで、新品の靴を履いて。走る練習らしい。

💨 💨 💨

ランニングシューズを買いに行って、気づいたことがある。陸上競技のスパイクに、ほとんど“角度”がないのだ。

これまで、短距離走のそれは、踵が接地しないように作られていた。

その形状により、スタート後できるかぎり前傾姿勢を保ち、つま先で地面を蹴り、すばやく腿を引き上げられるとされていた。

それは“ヒールのないハイヒール”で走るようなものだった。

ソールが反っていれば反っているほど、角度があればあるほど、その選手はツワモノとして見られた。

鹿もとんがりコーンのようなシューズに足をつっこみ、入賞したことがある。

昔の話である。

それが現在、フラットな靴底が主流になっていた。

妻がトットットをしているあいだ、鹿はつかの間の感傷に浸っていた。

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