引っ越し見聞録⑤
武蔵小山周辺は、庶民的なお店からお洒落なショップまでなんでもあって、買い物には困らない。
もともと出不精ではあったが、引っ越してからはずいぶんと動くようになった。
日用品の買い出しのときなどは、ただ文字どおりついていく。
この感じ、なにかに似ているなと思ったら、RPGのそれだ。
たとえば「ポケットモンスター ピカチュウ」のピカチュウのような。
そいつはモンスターボールには入らず、たえずサトシの後ろにいる。
振り返れば、奴がいる。
「ここに行こう」と言われてついていくと、かならずおもしろい発見がある。
自転車をすこしこいで目黒通りにでると、おしゃれーな店に出会える。
ホテルをリノベートした複合施設の「CLASKA(クラスカ)」では、ギャラリーで“木彫りの熊の世界”をやっていて、1階のレストランでは“炭酸の入ったホワイトチョコソース”を食す。
あまりにも情報量が多い。
だいたい、おしゃれーな雰囲気がある目黒側では、ぼくは借りてきた猫のようになってしまう。
それでも、ピカチュウのようについていく。
品川区側になると昔ながらの商店街があって、焼き鳥などを持ちかえったりする。
この幅の広さがまたいい。
じぶんは、ひとりでしか行動できないと思っていた。
それは、プライベートを優先したいという気持ちがあったからだと思う。
でもその考えは間違いであることに気づいた。
行動をともにすることで、プライベートが“なくなる”のではなく、プライベートがより“増える”。
そこがどこであろうと、だれかとともに過ごす時間は、じぶんを豊かにしてくれる。
当たり前かもしれないが、一概に「ひとり=じぶんの時間」とは言えないわけだ。
むしろ、じぶんらしい“ひとり”になるためには、じぶん以外の“だれか”の存在が必要である、というのが実際だろう。
だからきょうもピカチュウのようについていく。
[…] また、すでに引っ越しは済ませており、目黒線の武蔵小山に居を構えました。 […]
[…] と、スーパーで妻のうしろをピカチュウのようについているとき、思った。 […]