妻鹿日記(178)あの頃…
202208/03
妻しか(鹿)日記
登場人物: 私…鹿 妻…妻
第178回:妻としか叫ばない
* * *
我が家はこれまでに何度、彼への叫び声で満たされただろうか?
仕事から帰宅し、家事や食事が一段落したあと、見つめる先のゲームは正念場を迎えていて、だいたい彼が映し出される。
手に汗握る展開。固唾をのむ妻鹿。ゆったりとした大きな構えから、バットが繰り出されるや否や、
鹿|∠( ゚д゚)/イッタ!!!
妻|(✽ ゚д゚ ✽)キャッ!!
カメラは白球を追う代わりに、彼の優雅なフォロースルーをとらえている。
ベンチに拳を突き上げたあと、村上宗隆、22歳は、悠々とダイアモンドを一周し始める……。
こんなシーンをもう何度見てきたことか。その都度、「最高のシチュエーションのホームラン」が上書きされて、どれがどれだかわからなくなってしまった。
彼のすごさを称える言葉は評論家に任せて、しがない大人たちが彼にかける言葉はただ感謝だけだ。毎日、楽しみをありがとう、と。
「歴史の目撃者」になることが、“見る”という姿勢を超えて、自分自身が感謝の日々を生きられることだと知れたのは幸せだ。
そして我々も、すべての伝説が終わったあと、みずからのライフヒストリーにこう記すのだろう。
“あの頃、我が家はいつも歓声とともにあった”と。
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