妻鹿日記(174)東京・ヤクルト
202205/27
妻しか(鹿)日記
登場人物: 私…鹿 妻…妻
第174回:妻としか歌わない
* * *
妻が「東京ヤクルトスワローズ」の“東京”に関心を示した。
東京を本拠地とする球団には他に巨人軍があるが(むしろ巨人にとっての“その他東京”がヤクルトなのだろうが)、2つの東京の違いはなんだろうか。
長年のテレビ中継で全国各地に代々ファンがいる巨人に対し、ヤクルトの“東京”は狭い。わざわざチーム名に冠したのは“地元密着”をアピールする狙いがあったらしいが、「地元民」の内訳のほとんどは「転入者」だろう。それゆえ、神宮球場においてはビジター側のほうがファンで埋まることもある。
逆説的だが、地方の野球っ子たち思い浮かべる巨人(=東京)にはイメージとしての統一感がある一方で、神宮の杜に集う上京っ子(=勤め人)たちが見ている世界はそれぞれだ。
――傘を振って東京音頭を踊るまでは。
この瞬間だけ、故郷を出た大人たちに“東京”という町があらわれる。「これがおらが村だ!」と胸を張りたくなるような気持ち。この一体感が「東京ヤクルト」が見せてくれる地元・東京だ。
神宮のライト側に夜ごと出現する“ローカルな東京”に帰属意識を持ってしまったら、あなたはもう、スワローズファンだ。
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