童話『ひりあサンタと、りあじゅうトナカイ』

201012/25
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童話『ひりあサンタと、りあじゅうトナカイ』 作・シカミミ 絵・さめ子

 

1.あるひサンタはいいました。「りあじゅうにやるえさはない!」トナカイはさけをのみ、めすとつがい、とてもたのしいひびをおくっていたのです。くやしいサンタ。おくさんはいません。おこったトナカイはサンタに「しょくあんにでもいってろ!」といい、たくさんのともだちのもとにかけていきました。

 

2.サンタはこまりました。しつぎょうです。サンタはあしがわるいので、トナカイがそりをひっぱってくれないと、はたらけないのです。「とーなかーいやー」サンタはさけびました。しずかな、せつげん。サンタはなにをすればいいかわかりませんでした。サンタはうまれたときからサンタだったからです。

 

3.サンタは、おくさんも、ともだちもいないので、こまったときにはいつもシカそんちょうのいえにいきます。サンタはつえをつきながら、シカそんちょうのいえまであるきました。とんとん、とんとん。ゆっくりと、とびらがひらきました。「ああ、サンタさん、さむいでしょう、さあ、なかへはいって。」

 

4.シカそんちょうは、あたたかいミルクをいれてくれました。サンタはてをまぐかっぷであたため、ほっとひといき。さっそく、さっきおきたことをはなします。シカそんちょうはめをつむっていました。「そんちょうさん、どうすれば。」「サンタさん、しゅうしょくかつどうをしなければいけませんね。」

 

5.そのころトナカイは、あそんでいたわけではありません。りあじゅうパワーをばくはつさせ、「シカミミゆそう」にさいしゅうしょくしていたのです。りあじゅうは、ほんきになると、すごいのです。「にもつをとどけて、おかねがもらえるなんて!」トナカイはよろこびました。「サンタよりもいいや!」

 

6.サンタはおとしよりなので、しゅうかつにしっぱいしました。でもだいじょうぶ。やさしいそんちょうが、おもちゃやのアルバイトをみつけてくれたのです。あたらしいひび。こどもたちにおもちゃをわたして、おかねをもらうとき、いつもてがふるえます。こどもがよろこぶかおをみると、ほっとします。

 

7.おみせにまいにちやってくるしょうねんがいます。しょうねんは、きょうもおなじにんぎょうのまえで、じっとしています。たまにサンタのかおをみつめます。サンタはうつむきます。ながく、うつむいていました。かおをあげると、しょうねんとにんぎょうはきえていました。サンタはくびになりました。

 

8.「くびにならないしごとはありますか。」サンタはシカそんちょうにききました。そんちょうがだまっていると、サンタはトナカイとなかなおりしたいといいだしました。「ひりあと、りあじゅうは、なかがわるいものです。」そんちょうはめをみひらきました。「サンタさん、きぎょうするしかありませんね。」

 

9.トナカイははたらいてたくさんのおかねをかせぎ、おおきなそりをかいました。「きもちいいだろう」トナカイはめすトナカイをそりにのせてはしっています。「このしんしゃさいこうね」「まえのおんぼろとはちがうさ」「あ、かわいいみせね、あっちにはしって」めすはサンタのみせをゆびさしました。

 

10.「やらん!」サンタはどなりました。みせのなかはあまいかおりがします。サンタは、サンタのかたちをした、ちいさなさとうがしをつくっていました。「ぜんぶかってやるんだぞ」トナカイはくりかえしました。「そんなのはだめだ」サンタはことわります。トナカイたちはわらってでていきました。

 

11.「だから、ひりあと、りあじゅうは、なかがわるいものです。」シカそんちょうはいいました。サンタはかたをおとします。「きてくれて、うれしかった。でもひとりにぜんぶはいけない。」「おしいことをしました。」そんちょうはいいます。サンタはそとをみやりました。ゆきがしんしんとふっています。

 

12.サンタはひにひにやつれていきました。まいにちがっこうがえりのこどもたちがやってきますが、おしゃべりをするだけ。それでもサンタはいつもおおめにおかしをつくって、こどもたちをまっています。だから、おかねも、さとうも、へるばかり。ことしのふゆをこすためのまきも、のこりわずかです。

 

13.クリスマスがちかくなってきました。サンタはけついしました。

 

14.こどもたちのならぶ、ながいぎょうれつがあります。まえのこどもから、うしろのこどもへと、でんごんがやってきます。おとこのこがおんなのこにいいました。「おかしをもっていっていいよ。たくさんあるから、あせらないこと。でもひとりみっつまで。きみと、おかあさんと、おとうさんのぶん。」

 

15.トナカイがいきをきらしてかいしゃにもどると、すぐにまた、にもつがそりにのせられます。「はやくいけ、はやくいけ!」としゃちょうはせかします。「ことしはサンタがいない、おおもうけだ。」トナカイははじめて、このきせつをつらいとおもいました。あしもとのゆきがつめたくかんじられます。

 

16.ひとつ、ふたつと、にもつがじめんにころがっています。あちらにも、こちらにも。おれまがったきのえだ、さかさをむいたそり。ふくざつにからまったつなのさきには、ゆきにふかくしずんだトナカイ。トナカイのしかいには、まっしろなそらがうつっていました。

 

17.「にもつはだいじょうぶか。」しゃちょうはでんわにでてききました。「そう、トナカイはぶじね。」

 

18.そのよるは、あのふゆで、いちばんさむいよるでした。ほけんじょはそこびえし、トナカイはおりのすみでまるくなっていました。さしだされたしょくじをすませ、あとはねむるだけ、そんなときに、かぎがあくおとがしたのです。かおをむけると、そこにはふっくらとしたサンタがたっていました。

 

19.「あんた、またこえたね。」トナカイはみをおこしました。しかしあしがひどくふるえます。サンタはだまってトナカイにちかづき、そのからだをささえ、わらのうえにいっしょにすわりました。「ふしぎなものだよ。おかしをくばったら、またふとった。」サンタはほほえみました。「ひさしぶりにあえた。」

 

20.トナカイはしずかにうなずきました。サンタはつづけます。「おかしをすべてあげてしまったら、こどもたちは、さとうをたくさんもってきてくれた。そのおやたちは、まきをわけてくれた。それで、いきてこられた。おなかも、ふくれた、ふくれた。」サンタはおなかをたたいてみせました。

 

21.こうしまどから、ぼたんゆきがひらひらとまいおちていくのがみえます。サンタはこゆびをぴんとたてました。トナカイはくびをふります。「わかれたさ。もうはしれないしね。ともだちも、こんなさむいところきやしない。ここは、どうぶつだったらみんなおそれるところだ。おくられたら、さいご。」

 

22.あしただってね、とサンタはいいました。「ああ。じゅうじつしていたから、いつしんでもいいんだ。しょうじき、じゅうじつするのにもすこしつかれた。むしろやすみたい。そりゃこわいよ。でもちゅうしゃいっぽんですぐに…。」トナカイははなをあかくしました。「あんたもあした、だいじなひだろ。」

 

23.「ああ。もうなにもあげるものがないんだが。」それをきいてトナカイはわらいました。「おたがいに、なにもなくなった。おかしなもんだね、どうやっていきみても。」サンタもいっしょにわらいます。「わしはサンタ、このまちのサンタ、いまからいえをまわって、みんなにありがとうといってくるよ。」

 

24.「こんなさむいなかあるいたら、しんでしまうよ。」トナカイはとめました。サンタはいつになくやさしいめをしていました。そして、ふくろにてをいれると、おおきなすずをとりだし、トナカイのくびにつけてやりました。なかよくなれそうだ、といって。サンタは、ゆきのなかへ、しずかにさっていきました。

 

25.「メリークリスマス!」トナカイはえがおでさけびました。「メリークリスマス、サンタさん!」

 

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ものがたりはこれでおしまいです。「だから、サンタはめにみえない。でも、かならずやってくる。そしてすずのねは、そらからきこえてくる」。むらのひとびとは、こどもたちにこうつたえました。それいらい、クリスマスになると、よぞらをみあげて、みみをすますこどもたちでいっぱいになりました。

 

ひりあサンタと、りあじゅうトナカイ

 

おしまい

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