妻鹿日記(152)いつかの宇宙気分
202105/31
妻しか(鹿)日記
登場人物:私…鹿 妻…妻
第152回:鹿のぼやき
* * *
向井千秋さんが日本人初の女性宇宙飛行士としてスペースシャトルで飛び立ったとき、館林市民は旗を振って空を見上げ、鹿もそのなかにいた。
どこどこ出身だからという見方はあまり好きではないが、こども科学館は向井さんの記念館になり、公園には宇宙ツツジがあったりで、鹿も大人になるまでに十分刷り込まれてしまった。たしかタウン誌も“シャトル”だったな。
だから先日の新聞でその名を見かけたとき、一瞬で故郷に引き戻された気分になった。そこで向井さんはボクシング世界ミドル級の王者の村田諒太選手と対談をされていた。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/106970/2
“宇宙初”と“地上最強”のスペシャルマッチは、とても刺激的な内容だった。
向井千秋さん「人は違いからしか学べなくて、同じものを見つけた時に慈しむことができるんです。」
村田諒太選手「1つ言えるのは「負ける」ということは学べたと思います。」
1つの道を極めた者は、逆に差異や敗北へのまなざしを持っていた。ほんとうに強いやつは自分の“分”や“引き際”を知っている。
あるいはこれを「無知の知」というのか。その自覚からスタートする「飽くなき探究」というのは、自分の未熟さと向き合い続けるようなもので辛いはず。これに勝った、あれに勝ったと万能感に浸るほうがよほど心地よい。
一見すると謙虚に見える彼らの姿勢は、強靭な知力と体力によって支えられているのだ。
そしてかつての市民が肝に銘じることには、たまに宇宙に思いを馳せて、いまなお小さい自分を忘れないようにすることだろう。
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