妻鹿日記(107)ひとのときを、想う
202009/07
妻しか(鹿)日記
登場人物: 私…鹿 妻…妻
第107回:妻としか買えない
* * *
オーバーホールに出した腕時計の修理が完了し、妻と一緒に銀座のオメガに出向いた。
いつもよりめかしこんだ妻を傍らに、真新しくなった時計を受け取りながら、鹿は落合博満のことを思い浮かべていた。
西武時代のキヨハラが、どうすればホームラン王になれるか落合に尋ねたときのこと。
はやく結婚しろ、と、にべなく返す落合。
要するに家庭ができれば、食うために野球をするようになる。自分が打たなければ、一家路頭に迷う。この責任を負えば成績はおのずとついてくる、ということらしい。
今回、鹿も痛い出費ではあったが、それによりまた一生懸命働かなくてはいけなくなった。それが時計であればなおさらで、毎日しっかりと、「時」を意識して生きざるを得ない。
それは“時は金なり”ということでもあるが、JTのCMのように“時を想う”ことにもつながるだろう。
前回のオーバーホールは6年前だった。今度は妻とふたり、最初のひと巻きをして、銀ブラをつづけた。
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