妻鹿日記(90)ご託宣
202006/05
妻しか(鹿)日記
登場人物: 妻…妻 私…鹿
第90回:妻としか進めない その3
* * *
夢の国あつ森では、タヌキから言われるがままにタダ働きさせられるのが実情だが、それでも実質タダで土地が与えられているのはユートピアに近い。
お金さえあれば、どこでも好きな場所に家を建てられる。
近ごろ妻鹿は、路線価を調べて、実勢価格を計算し、不動産屋であつかわれている物件が妥当かどうかを検討している。
これは安い! というのがあっても、だいたいは「再建築不可」。接道義務を満たしていないのだ。
ローンの担保にもならず、運良く中古で買えても、災害で壊れたら、建て直しできずに文字どおり路頭に迷ってしまう。
ミドル夫婦の家なき子はさすがに辛い。
妻「……買い占めれば良い」
鹿「?」
妻「道路を目指して進むのみ」
鹿「!」
さすがディベロッパー妻。道がないなら、道をつくればいいじゃない。四方を囲む、あるいは行く手を阻む家々を買収し更地にすれば、あら不思議、目の前に道路があらわれる……。
ただ、他物件を巻き込むこの“強制セットバック”ができるくらいの財力があれば、最初から条件なしの自由な土地を買っているだろう。残念。
妻の願いが実現できる国。それはあつ森。きょうもスコップ片手に、荒野にたたずむ。
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