妻鹿日記(43)師匠
202001/07
妻しか(鹿)日記
登場人物:私…鹿
第43回:鹿しかいない日 その5
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年賀状が来た。鹿のもとに1枚届いた。それは師匠からであった。
ありがとうございます、がんばります、ということで、シネマルシェで連載されている「映画と哲学」を年始めに読んだ。
今回のテーマは「悪」。おそらく、現代社会に突きつける気持ちで書かれたコラムだと思う。
“ヤスパースによれば、悪の本質は、究極的には愛の欠如に、憎悪のなかに、絶滅への意志や虚無への意志(ニヒリズム)のなかに存在する。”
これはそのまま今日の世界を取り巻く情況ではないか。
“アイヒマンは(アウシュヴィッツの)鉄道輸送の「効率化」に関して、自分の事務能力の優秀さを鼻にかけてさえいた。
これは日々、答弁で見るあの「顔」ではないか。
後段ではアーレントの「凡庸な悪」に言及し、「思考しない」という概念のアクチュアリティはいよいよ増す。
愛の欠如と、社会的な疎外という度し難い悪循環のなか、少なくとも「考える」ことで、“悪につけこむ悪”には立ち向かえると信じたい。
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