妻鹿日記(39)火垂るの妻

202001/03
Category : Notes妻鹿日記 Tag :

妻しか(鹿)日記

登場人物:私…鹿 妻…妻

第39回:妻しか得られない その2

* * *

ピピピッという電子音で目が覚めた。薄闇のなかで妻が背を丸めて座っている。

手にした棒状のものを見つめ固まっていた妻は、再び、布団をかぶりはじめた。

「いやいやいや、なかったことにしないで! 何℃あるの?」と思わずツッコミを入れる鹿。

それは高熱だった。病院探しスタート!

三が日に開いているクリニックなどないとわかっていたので、都の福祉保健局が運営している医療案内サービスに電話をかけてみた。

しかし、これがなかなかつながらない。みんな体調を崩しすぎたよ! と妻以外の存在に憤る鹿。

何十回目のコールでようやく自動音声につながり、受診を希望する科を言うように指示される。

鹿「内科!」

AI「ナ・イ・カですね。つぎに郵便番号を入れてください。」

鹿「えっ、番号、えっと」

AI「認識できませんでした。コールセンターにおつなぎします」

鹿「えっ、まってよ、はやいよ展開が。心の準備が」

AI「ただいま混みあっており、このままお待ちいただくか…」

鹿「結局つながらないんかい!」

といったやり取りを一度したあと、今度は郵便番号を控えて電話をすると、自動音声が近くの病院を伝えはじめた。

AI「●●診療所。住所は〇〇区〇〇マイナス○○マイナス」

鹿「えっ、ちょまてよ、マイナスってなんだよ、あ、住所の“-”のこと!?」

AI「▲▲附属病院。住所は…」

鹿「もうつぎ!? ちょま」

AI「■■医院。住所は…」

鹿「(戦意喪失)」

FAXでも送ってくれるそうなのだが、うちにはない。持たぬ者には、このようにリスニングの試験が行なわれる。

鹿は自宅からいちばん近い病院だけ記し、ネットで調べた。すると「事前に電話」と書いてある。

!(嫌な予感)

プルルルル、プルルルル、ツーツーツー…

鹿「ツマ―!! いまみつけたんだけどね、つながらなくてね」

妻「(;´・ω・) サクマドロップス」

鹿「節子―!!!」

鹿は急いで何十回もかけ直した。そして、ついにそのときがきた。

病院「どうしました」

鹿「妻が熱を出しまして…」

人の声を聞いて、これほど安心するとは。ここまで、へんなのばかりと相手してきたから。

病院「ではお名前を」

鹿「悠介です

病院「……奥様のほう」

鹿「(/ω\)」

予約をして、妻に着替えてもらって、すぐに家をでた。

妻「鹿…」

鹿「どうしたの」

妻「寝癖がすごい」

AIと格闘してたからね!!! さあさ、病院に行こう!

検査の結果。インフルエンザ。やっぱり行ってよかった。

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