妻鹿日記(33)ついつい
201912/11
妻しか(鹿)日記
登場人物:妻…妻 私…鹿
第33回:妻しか見抜けない その8
* * *
妻の編みかごにカビが生えたというのをなんとなく聞き流していたら、ある日、鹿の鞄にも白いもこもこが広がっているのをみて「ツマー!!!」と叫んだ。
そのときの妻の
(-.-)
という顔は、まあ、もっともであった。明日は我が身である。
そこからの鹿は早かった。カビ対策本部を設置し、部長を拝命。家中で防カビ出動を繰り返した。
それにしても日本の高温多湿は嫌気がさす。日本家屋はおそらくそんな気候に対処すべく築かれてきたと思うが、いまや辺り一帯コンクリートジャングル、自然に反して作られたマンションばかりである。
鹿は“家庭を守る”という気持ちでいるが、それが防カビ防虫を指してしまっては、味気ない。
だがつまらないとはいうものの、そういった言葉は精神的で崇高な次元で語られるものではなく、なんでもない日常に根ざしてはじめて意味を持つのかもしれない。
スーパーに行ったら、つい安売り品に目がいくこと。
ショッピングモールでは、生活用品のフロアでつい便利アイテムを探してしまうこと。
こういった“つい”の積み重ねが馬鹿にできない家庭の要素なのだと思う。
まえに祖母がチラシのために新聞をとっていると言っていて、なんと無駄じゃないかと思っていたが、いま確かに記事よりさきに広告を読んでいる自分がいる。
コメントを残す