詩No.1『セルジュとマリー』

201402/04
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マディソンスクエアガーデンの第七公演で
ムショ帰りのボクサーと22歳のジプシーが
風の弾丸を撃ち合った

 

ルポルタージュしたセルジュの評判はどんどん高まり
周囲を驚かせた
彼はただシェリーとシェリフを書き違えただけだった

 

街はお祭り騒ぎで厳戒態勢
郵便局の窓ガラスには
いつも昨日の新聞が貼られていた

 

“さようなら”
レインコートのマリーは列車に飛び乗り
廃墟の街を見つめて二時間半考えた

 

現像液から引き上げられた彼女は灰色の目をしていて
水を滴らせ
彼が来るのを待っていた

 

うっかりしていた
彼女を失くした
彼は酒を飲むようになった

 

切手を残して
手紙を食べた白ヤギを
バイクに乗せて絵描きの家まで走らせる

 

十三軒目のバーに入ったとき
赤ワインのボトルは底をつき
彼の片目が転がった

 

遠近法をなくした画家は売れっ子になり
花束の山をかきわけて
彼の手紙を探し出す

 

ある日ここにもサーカスの一団が訪れて
電子オルガンを弾き鳴らし
彼女にエジプトの指輪を与えて立ち去った

 

義眼の道化師は彼女を見届け
次の街へと歩み出す
礼儀正しい葬儀屋は、彼女に彼の行く先を教えてやった

 

彼の名を知る者は他になく
時代に遊ばれ言葉に騙され
今は地下鉄の切符売り

 

彼女は彼を地上に連れ出そうとするも
彼は首を横に振るばかり
彼の望みはもう、永遠にとどまること

 

セルジュはマリーの切符を切った
マリーはセルジュを切り取った
駅舎は今日も人に溢れていた

 

シカミミ氏・シルクスクリーン・2014

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