妻鹿日記(162)しかスポ号外
妻しか(鹿)日記
登場人物: 私…鹿 妻…妻
第162回:妻としか見ない
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スワローズが6年ぶりに優勝した。人は本当に満ち足ると、わざわざその感動を言葉に置き換える必要がないらしい。
というわけで、はや一週間が経ったが、ようやくこの快挙を振り返られるようになった。
2年連続で最下位に沈んでいたチームを優勝まで導いた秘訣について、すでにメディアでは数多くの視点が提示されているが、鹿の胸にすっと染み込んだのは、高津監督の「僕には言葉しかない」という発言だった。
それは“絶対大丈夫”をはじめとする文字通りの「合言葉」を意味するだけでなく、ヤクルトの絶対的ストッパーとして君臨しつづけ、メジャーまで上り詰めた人物ならではの覚悟が感じられた。
かつてなら、自分(高津)が出れば試合を決められた。いま、ベンチにいる元一流は、日々、もどかしい思いで戦況を見守っているはずだ。
つまり、手足(才能)を奪われた代わりに“言葉しかない”状況があるのだ。そして、みずからの非力を知った者は「任せる」という姿勢が基本になっていく。
実際にこれが、1年目と2年目の違いだという。最初は自分でああしよう、こうしようと考えていたところ、今年は指導はコーチに委ね、選手には自分でどうすればいいのかを気づける環境を意識して作ったとのこと。
まさにマネジメントの鏡ではないか。プレーヤーの延長にマネージャーはない、というのは案外、組織で見過ごされてしまう点である。できる人ほど、自分でやれてしまうから。周りもそれを咎めない。
この自己との辛い別れを経て、はじめて選手を絶対的に信用することができる。
選手たちはその信頼を受けて各々で進化(および真価・心火)し、9つの役割における適者生存の結果、監督からすれば適材適所の指揮を執れる、というのが良いチームのひとつの形だ。
圧倒的な個の力を集めるチームがある一方で、このようなチームは強いかはわからないが、負けないし、崩れないだろう。
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