妻鹿日記(139)東急の車窓から

202102/15
Category : Notes妻鹿日記 Tag :

妻しか(鹿)日記

登場人物: 私…鹿 妻…妻

第139回:妻としか乗らない

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衣食住の“住”が示す範囲をどこまで広げるべきか。

アクセスはもちろんのこと、電車そのものの魅力も入ると思う。なんせそこは、日々の通勤で決して少なくない時間を過ごす“空間”である。居室の延長ととらえてもよいはずだ。

車両の大きさ、座り心地、空調設備など多くのポイントがあるだろうが、いちばん心理に影響を与えるのは電車を取り巻く環境そのもの、すなわち“どこを走っているか”だろう。

鹿は車窓から見える景色が大好きなので、都心の私鉄は息苦しい。その多くが地下にもぐっているからだ。

コンクリートの壁が右から左に流れるのをただぼんやり眺めることほど、つまらないものはない。これだけで、相当なストレスになる。

浜ちゃんも“流れる景色を必ず毎晩見ている”と、WOW WOW歌っていたではないか。“家に帰ったらひたすら眠るだけーだーかーらー”と。

そんなサラリーマンの心のムーヴメントに応えてくれる路線が、妻鹿たちの東急大井町線なのだ!

溝の口と大井町をつなぐこの短い路線は、大岡山を除いてすべて地上を走行する。しかも、そのほとんどは高架でさえなく、都心にもかかわらず、路上をガタンゴトン進んでいく。

これが、タマラナイ。“路面電車”区間ではホームに上がるために踏切を渡らなくてはいけないが、まあ、いいじゃないか。九品仏などホームが足りずに先頭(後方)車両のドアが開かないが、気にすることはないんだなあ。人間だもの。

一説によると、等々力渓谷の水に障るから、この一帯は採掘できないらしい。

“自然豊か”ということは、“人間味あふれる”ということでもある。かつて都内のさまざまな路線を利用してきた鹿が思うに、もっとも見ていて楽しい電車が大井町線で、仕事帰りに外を見やれば、一瞬にしてトゲトゲハートのWOW WOWが鎮まっていくのを感じられる。

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