第43 校正をしながら考えた(再校)

201802/14

 

恐れ多くも“文章の書き方”について学生にレクチャーする場をいただいた。大学のキャリア・サポートセンターが主催する「エントリーシート対策講座」の一環として開かれたもので、自分は「人に読んでもらえる文章にはどんなポイントがあるだろう」と問いを立て、学生たちと一緒に90分、文章と向き合う時間をつくってみた。

 

ただでさえ身が縮む思いがするのに、いわゆる「就活」というレールを踏んでこなかった自分が何かを語るのは笑止千万ということで、数か月前にこの話をいただいてから、こっそり就職活動に関する勉強をつづけていた。テクニックを教える対策本から就活(労働)そのものを論じる書籍まで片っ端から読みあさり、ある場所のBOOK・OFFの在庫処分にはだいぶ貢献したことと思う。(一仕事済んだのでまた売りに出すが。)

 

確かにかつては「脱就活」を掲げて実践をしてきたが、何度も言うようにそれは就職の否定ではなく多様な選択肢の模索であり、誰かが就職を目指す際に自分が提供できる情報があるとすれば、惜しみなく協力したいと最近は考えていた。今回、こういった場をお借りできたことは大変光栄で、これまで就職関連でお世話になった方々への世代をまたいだ恩返しの気持ちもある。

 

引き受けたからには入念に準備を重ね、先述の勉強をはじめとし、パワーポイントでのスライドの作成やワークシートの用意などを行ってきた。人に伝える技術を説くのに、自分がしっかりとしたプレゼンテーションをできないようでは恥ずかしい。手間はかかったが、徐々に教材をつくることの面白さにひかれ、学研グループの一員になったような心持ちにもなった。教えることはすなわち整理することであり、思考がまとまっていく喜びと学びとは切り離せないようだ。

 

 

そのようにして迎えた本日。当初の予定より参加者の出足が鈍ったが、なんといってもバレンタイン。おそらくバレンタインやバレンタインで忙しかったのであろう。自分も「チョコ」と「言葉」を同時に差し出されれば、迷わずチョコを選んで離さぬ自信がある。むしろきょう集まってくれた学生には、その熱意に頭が下がる思いだ。その好意に応えてチョコを配っておけばよかった。

 

せっかくなので、話の一部をここに掲載したい。「文章の印象は、書かれる内容より書く形式に大きく左右される」という趣旨のもと、「同じ内容であっても読みやすいかたちに整理するだけで“うまく”みえる」ことを作業を通して理解してもらった。

 

例えば、

  1.  難しい漢字は使わない(パソコンの変換機能をあてにしない)
  2.  漢字を多用しない(ひらがなとのバランスを考える)
  3.  読点を打つ(採用担当者の呼吸を想像しながら)
  4.  簡単な言葉で表現する(よりシンプルな言い回しをしてみる)
  5.  省略をしてそぎ落とす(その言葉は本当に必要? 一度削ってみよう)
  6.  言い換えを考える(わからなければ「〇〇 同義語」と検索)
  7.  文章の順番を入れ替える(スムーズに読み進めることができますか?)
  8.  文章をまとめる、区切る(入れ替えると、まとめたり、区切ったりできませんか?)
  9.  結論を先に示す(PREP法など)

 

といったポイントを例文の添削をしながら示していった。このようなかたちだ。

 

【原文】

「進路を考える上で、プロの現場に出てみたいと思い、キャリア・サポートセンターに行って相談した所、夏休みの間のインターンシップを紹介して頂きました。私は編集コースですが演出部でなら現場全体を見ることが可能ではないかと思い、演出部として現場に参加しました。」

【添削例】

「進路を考えるうえ(2)で、プロの現場に出てみたいと思い、キャリア・サポートセンター(5)相談したところ(2)、夏休み(5)インターンシップを紹介していただ(2)きました。私は編集コースですが、演出部であれば現場全体を見られる(4)のではないか(5)、アシスタント(6)として撮影(6)に参加しました。」

 

いっさい内容に触れずに印象が変わることを実感してもらえたら幸いだ。

 

これは自分の手の内を明かすようで気恥ずかしいのだが、言葉はある種の公共財だと思っているので、それぞれが持てる情報を寄せ合えば、社会全体の幸福につながるだろうと信じている。

 

なんと一連の講座の担当者にチョコをいただくというサプライズもあり、あわせてその喜びも共有してしまおう。