妻鹿日記(133)おうち探し⑳「新居」

202012/24
Category : Notes妻鹿日記 Tag :

妻しか(鹿)日記

登場人物: 私…鹿 妻…妻

第133回:妻としか住まない その22

* * *

一度しか見学しなかったという若干の不安はみごとに払拭された。

収納は十分、設備も使い勝手がよく、思わぬ利点もあってお釣りがくるほどだ。

それは夜景が見えたこと。住宅の夜の姿というものは、実際に住んでみないとわからない。

入居後、はじめての夜を明かし、煌々と輝く街の灯りを眼下に望んだときは、ふたりで飛び上がった。

当初希望していた戸建てじゃなくてよかった。タワマンに住みたいというひとの気持ちも、なんとなーくわかった。

また、ある程度の広さや開放感が、どれほど人間の心理に影響を及ぼすのかも知った。

もちろん基本は住人の心がけだが、その“心”は思った以上に環境とリンクしているようだ。

心身にゆとりをもたらすべく、ひとは家電や寝具にこだわったりするが、その考えを突き詰めれば、最終的にはそれらを囲む“家”そのものに行きつくのだろう。

鹿は引越しの疲れもすぐに癒えてしまった。妻もより健やかに過ごしてほしい。

妻鹿が投資したものの正体は「健康」だった。このご時世、経済的には物件購入をすすめにくいが、時代の最重要課題となった「健康」に目を向ければ、案外、賭けてみる価値があるかもしれない。

そして思い立ったらだれでも挑めるように、ここに、おうち探し日記(全20話)を記す。必要なとき、あらためてご一読いただきたい。

妻鹿日記(132)おうち探し⑲「退去」

202012/23
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妻しか(鹿)日記

登場人物: 私…鹿 妻…妻

第132回:妻としか住まない その21

* * *

内見からスタートしたおうち探しは、“引越し”で終わりではない。

それまで住んでいたアパートの契約を解除し、“退去”するまでが一連の流れである。

飛ぶ鳥、跡を濁さず。感謝の気持ちを込め、つぎに入居するひとの幸せも願い、空っぽになった部屋を掃除した。

振り返れば、物件購入に向かい動き始めるまでは、ここが最高の場所だった。

狭くても、暗くても、湿気が抜けなくても、住人が幸福であれば素晴らしい場所になることを教えてくれた。

「住まい」とはまさしく「住まう」ことからはじまるのだ。これは新しい住居においても第一に心がけていきたい。

立ち会いの日。電気も水道も止まった部屋で、窓から差し込むわずかな光を頼りに隅々を確認していると、やはり初心にかえったような心持ちになった。

これを明るく感じさせてきたのは、妻鹿の心。大事なものは目に見えない。このさき、どんなことがあっても俯かずに未来さえ見つめていれば、人生の景色が“色”を失うことはないだろう。

住んだ期間だけでなく、将来分の「ありがとう」を言って、カギを返した。

妻鹿日記(131)おうち探し⑱「お引越し」

202012/22
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妻しか(鹿)日記

登場人物: 私…鹿 妻…妻

第131回:妻としか住まない その20

* * *

決済から引越しまでは、数日しかない。余裕をもって準備してきたものの、直前まで使うものは手つかずの状態だ。

たとえばガステーブルやベッド。まだ十分使用に耐えうるものだが、新居には必要なくなり、処分しなくてはならない。

自治体に粗大ごみ収集の申込みをし、指定の金額の処理券を買い、“決戦”に備えた。

ベッドを収集場まで運び出すのである!!

妻|(゚∀゚)

鹿|ドラゴォォォ!!!

1階なら、ベランダから出せると踏んだ。妻が室内でベッドの端を持ち上げ、外で待ち受ける鹿がその反対側をつかみ、一気に引っ張り上げるのだ!

名づけて“ベリーロール作戦”。ウルトラC級の高度な技だが、いまの妻鹿だったらできるはず!

阿吽の呼吸をみせてやれ!!

鹿「ツマー! 重いよー! 助けてー!!」

妻に表まで駆けつけてもらい、一緒にベッドを下ろし、収集所まで移動させた。

無理せず、頼る。ダメだったら、カッコつけずにギブアップ。これぞ夫婦の力なり!

その晩、跡形もなく運び去られたごみ置き場を見て、われわれの努力が社会に認められた気がした。

来たときのようになにもない部屋は、充足感に満ちていた。

妻鹿日記(130)おうち探し⑰「決済・引き渡し」

202012/21
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妻しか(鹿)日記

登場人物: 私…鹿 妻…妻

特別出演:売り主さん、不動さん、バンクさん、司法さん

第130回:妻としか住まない その19

* * *

待ちに待った決済日。銀行で売り主さんと再度会って、残代金やローン手数料、そして不動さんへの仲介手数料などを払う。

それらが済めば、念願のカギを受け取れる!!

鹿|φ(・

妻|ヽ(゚∀゚)ノ パッ☆

鹿が署名、押印をした書類を、妻がすばやく整理していく。

鹿|φ(・

妻|ヽ(゚∀゚)ノ パッ☆

司法書士による所有権の移転登記が終わった。妻鹿家、ここに誕生。この国に、ちっぽけだがわれわれの土地が記された。

鹿|φ(・

妻|ヽ(゚∀゚)ノ パッ☆

火災保険にも入った。小さいけれども、手堅く守るんだ。

妻鹿|ヽ(゚∀゚)ノ パッ☆

最後は、通帳に振り込まれた大金を、その場で関係者と分けあった! これまでの感謝の気持ちと一緒に……。

売主さん|ヽ(゚∀゚)ノ カギ

妻鹿|。゚(゚´Д`゚)゚。

手のひらに希望がおさまった。この火種を大きくして、周囲を明るく照らすまで輝かすのは、売り主さんに代わってわれわれの使命だ。

この日が大安だと知ったのは、不動さんに別れを告げたあとだった。全員で、門出を祝ってくれていたのだ。

そして、その足で新居へ……。

♪ふたりで~ドアをあーけーてー

ガチャリ。

鹿|。゚(゚´Д`゚)゚。

妻「カギを変えたい」

鹿 (゚∀゚)

夢見心地になるのはまだはやい! と言わんばかりに現実的なことを指摘する妻。さすがだ。

すぐに工事業者に来てもらい、電子錠を取りつけた。希望もカード式の時代に。

妻鹿日記(129)おうち探し⑯「家具購入」

202012/01
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妻しか(鹿)日記

登場人物: 私…鹿 妻…妻

第129回:妻としか住まない その18

* * *

家電だけじゃなく、家具もほしいなあ、となった。

我が家には和室がある。季節は冬。

妻|(゚∀゚)キタコレ!! コタツ!

ああ、ひとはこうやって、+αを求め大赤字に陥っていくのだろう。

いらぬものといえば、家電でも家具でも購入時にいくつかの案内をされる。

ネットの契約であったり、ウォーターサーバーのレンタルであったり。

妻にいわせれば、鹿は正直にアンケートを書くから、店員を招き寄せてしまうのだという。

半分正しいが、残り半分は、鹿はじぶんも営業に近いことをしているから、彼らをすすんで受け入れているのだ。

アポの有無にかかわらず、自社の商品やサービスを説明する役を担い、初対面のひとに話す大変さを、鹿はよく知っている。

“招かれざる客”への対応は、厳しく、辛いものばかりだ。

だから、鹿はじぶんがお客さんになったときは、できるだけ親身に話を聞く。

その時間だけでも、セールスマンのストレスが減ってくれればいいなあ、と願いながら。

妻には説明していなかったが、そういう事情があるのだ。

だが、

最後には、

やっぱり断る。

お水なんていらないよ。