引用日記まとめ14(労働その2)

201009/16

引用日記のテーマ「労働」2010年9月16日

 

ここまでに、労働問題は搾取よりも疎外にあるとみてきた。その点に関して、マルクス/エンゲルスの『ドイツ・イデオロギー』を参照したい。

 

「共産主義社会では、各人が一定の専属の活動範囲をもたずにどんな任意の部門においても修行をつむことができ、社会が全般の生産を規制する。」

 

「そしてまさにそれゆえにこそ私はまったく気のむくままに今日はこれをし、明日はあれをし、朝には狩りをし、午後には魚をとり、夕には家畜を飼い、食後には批判をすることができるようになり、しかも漁師や漁夫や牧人または批判家になることはない。」

 

まさしく疎外なき世界。全人間的に生きること。私の存在は漁師や牧人に括られない。自分の本性に根ざした欲求を実現していき、自己の完成を目指す。そして「食後には批判」、というところも興味深い。午睡ではないのだ。自由な批判を通じて個と社会とがつながり合い、社会もより良き方へ歩み出す。

 

食後に批判するには、自由な時間だけでなく、自由に語り合える「場」も必要だ。誰もが自由に討論できるようなカフェ、サロン、広場、いわゆる「公共空間」と呼ばれる場所。疎外なき社会には、各人の目的に沿って労働に打ち込める「個の次元=時間」と、それを結合する「社会の次元=空間」の両輪が欠かせない。

 

自由な個人と、彼らが集える公共性のある社会。そのような疎外なき社会を、手垢にまみれた「共産主義」と言わずに、アソエーションと呼ぼう。アソシエーションとはなにか。柄谷行人『世界共和国へ』(岩波新書)より引用する。

 

「アソシエーショニズムは、商品交換の原理が存在するような都市的空間で、国家や共同体の拘束を斥けるとともに、共同体にあった互酬性を高次元で取りかえそうとする運動です。(…)カント的にいえば、『他者を手段としてのみならず同時に目的として扱う』ような社会を実現することです。」p.179

 

労働問題を「搾取」の点からみてみる。搾取は労働者から資本家への「贈与」である。交換原理が厳密に守られる資本主義の根底には、贈与の力がある。搾取をただ字面だけで眺めていては人間社会の本質は見えてこない。贈与の力を認識すれば、それを資本の増殖から違う方向へ振り向けることが必要だとわかってくる。

 

搾取を否定するときに、一緒に贈与の力まで否定してしまったら、新しい社会のありかたが描けなくなってしまう。疎外なき社会(アソシエーション)が、かつて共同体にあった互酬性を高次な次元で取り戻そうとするものならば、贈与の力はその社会の原動力となる。

 

今の社会の労働でも、それは誰かのためにはなっている。しかしそれで人々が結ばれるのではなく、逆に孤立していってしまうという矛盾。資本主義は「贈り物」を「商品」に変換する機械だ。商品の集積は人間関係を見えなくする。贈り物が正しく配達される社会をつくること、これがマルクスの問題系だ。