引用日記まとめ2(岡本太郎)

201008/12

引用日記のテーマ「生命」2010年08月12日

岡本太郎『今日の芸術』、光文社知恵の森文庫

 

「まことに、芸術っていったい何なのだろう。素朴な疑問ですが、それはまた、本質をついた問題でもあるのです。芸術は、ちょうど毎日の食べものと同じように、人間の生命にとって欠くことのできない、絶対的な必要物、むしろ生きることそのものだと思います。p.16」

 

芸術は、生きることそのもの。これは岡本芸術のエッセンスだ。

 

「すべての人が現在、瞬間瞬間の生きがい、自信を持たなければいけない、そのよろこびが芸術であり、表現されたものが芸術作品なのです。p.16」

 

岡本は、現代社会に生きる人間は「自己疎外」の状況にあるといい、失われた自分(人間性)を回復するための「もっとも純粋で、猛烈な営み」を「芸術」と定義する。つまり、日常を突き破って創造する行為自体に、芸術の価値を見出しているのだ。

 

僕は大阪万博も岡本太郎の出ていたCMも知らないが、彼の書いた文章を通して、いま、ここで彼に出会っているような気分になる。そしてそのような「命」の宿った文章を書けるひとが、一流なんだと思う。

 

「自分の生活のうえで、その生きがいをどのようにあふれさせるか、自分の充実した生命、エネルギーをどうやって表現していくか。たとえ、定着された形、色、音にならなくても、心の中ですでに創作が行われ、創るよろこびに生命がいきいきと輝いてくれば、どんなにすばらしいことでしょう」p.119

 

芸術作品を観賞する場合にも、そこには「創る」行為があるのだと岡本は言う。

 

「創られた作品にふれて、自分自身の精神に無限のひろがりと豊かないろどりをもたせることは、りっぱな創造です。つまり、自分自身の、人間形成、精神の確立です。」p.119

 

「すぐれた作品に身も魂もぶつけて、ほんとうに感動したならば、その瞬間から、あなたの見る世界は、色、形を変える。生活がいきがいとなり、今まで見ることのなかった、今まで知ることもなかった姿を発見するでしょう。そこですでに、あなたは、あなた自身を創造しているのです。」p.119

 

この言葉は僕自身も実感できる。ある絵画、映画、文学に触れることで、世界の色や形が変わってしまう、それまで自分がいた場所とは違うところに立っている、そんな感じにとらわれることがある。

 

まさに芸術とは爆発なのだろう。生命の、ビッグバン。

 

最後は、岡本太郎『自分の中に毒を持て』(青春文庫)からの引用で締めよう。この本の冒頭の文章は、まさに名文と呼びたい。簡潔で、力強く、そして美しい。

 

「人生は積み重ねだと誰でも思っているようだ。ぼくは逆に、積みへらすべきだと思う。財産も知識も、蓄えれば蓄えるほど、かえって人間は自在さを失ってしまう。過去の蓄積にこだわると、いつの間にか堆積物に埋もれて身動きができなくなる。」p.1

 

「人生に挑み、本当に生きるには、瞬間瞬間に新しく生まれかわって運命をひらくのだ。それには心身とも無一物、無条件でなければならない。捨てれば捨てるほど、いのちは分厚く、純粋にふくらんでくる。」岡本太郎